「長期厳選投資」を掲げる日本のファンドマネージャー、奥野一成が書いた一冊。投資家の思考法を持つことが投資の成功だけでなく、ビジネスの成功にもつながることを説いている。投資を行う上での重要な考え方、ビジネスと企業投資の共通点、不確実な時代を生き抜く上での資産形成の行い方を学べる一冊。
ビジネスエリートになるための 投資家の思考法 The Investor’s Thinking
お金について
お金は問題解決の対価
お金について、何となく卑しいもの・汚いものと思う人も多いかもしれません。しかしお金は決して汚いものではなく、企業や個人が顧客の問題を解決した対価であると筆者は述べています。複雑の問題や大きな問題を解決した対価がお金として帰ってくるのです。
キーエンスの年収が高い理由は、顧客に提供している価値が高いからです。単に製品を売る会社ではなく、現場の細かいニーズを聞き取り、顧客すら意識していない問題を発見するコンサルタントの役割を担っているのです。だから利益率が高く、高い年収を受け取ることが可能なのです。
機能や性能を満たすことだけが問題解決の対価ではありません。フェラーリは中古でも数千万円、数億円の値がつくことがあります。買い手は移動手段に数億円を払っているわけではありません。「フェラーリを持っている自分」に価値を感じて購入するのです。フェラーリは移動手段である車を売っているのではなく、フェラーリというブランドの高い付加価値を売っていると筆者は述べています。
お金を生み出す方法
お金は問題解決の対価と捉えると、お金を生み出す2つの方法を導き出せます。
1つ目は顧客の問題を発見・解決できる企業へ長期投資をしてオーナーとなり、企業に働いてもらうこと。
2つ目は自己投資により、自身が顧客の問題を発見・解決できるビジネスマンになること。
以上2つがお金を生み出す方法です。そしてこの2つを成功に導くために、投資家としての考え方が必要なのです。
優良企業への長期投資
優良企業とは?
自分自身ではなく、優良な企業に投資してお金を生み出す長期投資。それでは優良企業とはなんでしょうか?
それは競争優位性があり、利益を再投資することでさらに強くなり、複利の力が働き企業価値を向上させることができる企業です。複利の力が発揮されるのは、競争優位性がある強い企業のみであります。
長期投資とは?
それでは長期投資とはどのくらいの時間軸のことを言うのでしょうか?
筆者は長期投資の期間は永遠であると述べています。素晴らしい経済性を持っていて価値が増大していく企業に投資した場合は、永遠保有するのが最適解であるという持論をもっています。また配当金に関しても強制的な利益確定と表現していて、強い企業なら再投資して複利の力で伸ばしてほしいと考えているのです。個人投資家の方とはだいぶ考え方が違いますね。以前読んだファンドマネージャーの本でも、配当金は企業価値を毀損すると述べられていて、個人投資家とプロの投資家では考え方は違うみたいです。しかし頻繁に売買を繰り返すよりも、価値を増大させていく企業をずっと持ち続けることのほうが、多くの人にとってはより良いパフォーマンスを生むのではないでしょうか。
優良企業の発掘の仕方
続いて一番大事な優良企業の見つけ方についてです。自分だけが優良企業と思っていても意味はなくて、実際に価値を増大させていく企業に投資しなければ、複利の力を感じることはできません。優良企業の見つけ方について、本書では多くの事項が書かれているのですが、私が重要だと思った2つに絞って解説していきます。
利益を生み出す源泉を考える
利益を生み出す源泉がどこにあるのか、企業が営む事業が本当に強い事業であるのかを考えることがとても重要です。株価は短期的には需給や、一時的な収益悪化により変動します。しかし本当に強い事業を営んでいる企業の株価は長期的には必ず上昇すると筆者は述べています。目の前の株価を追いかけるのではなく、企業の利益の源泉を特定し、本当に強い企業を見つけることが大切なのです。
合理性と創造力
企業が営む事業の強さを見極めるには、「合理性」と「想像力」が必要です。財務情報だけでなく非財務情報や、自身の頭を使って考えることが大事なのです。筆者は企業を調べる際、20年分の財務情報をチャートにして眺め、売上利益の伸び方や利益率、安定性などをチェックします。優れた企業は安定的な成長や高い利益率、優れた財務状況など共通の特徴が表れることが多いのです。しかし売上や利益率、健全な財務状況はあくまで結果であり、「なぜそのような形になっているのか」を調べ考えることが重要なのです。その原因を特定するため、企業の沿革やサービスの性質、競合状況、顧客の何の問題を解決しているのかを徹底的に掘り下げます。事業ごとに調べ上げ、国内世界の経済状況と組み合わせて、各事業が本当に強い事業であるのかを考えるのです。仮説が浮かんだら企業訪問をして、社長に疑問や仮説をぶつけ、そこからまた新たな考えを見つけ更に考える。このプロセスを繰り返して、本当に強い事業を営む企業を見つけ、実際に投資を行うのです。
企業訪問など個人投資家には中々できないこともありますが、IRで問い合わせたり、実際に株主総会に行って話を聞くことは可能です。一番投資で重要なことは、「なぜ」を深ぼっていくことであると筆者は述べています。経営者の話や世に出ている情報を鵜吞みにせず、自身の頭を使って考え抜くことが勝つために必要なのです。次の決算の数字を予想したり、需給を読んで投資したりする手法は参加者が多く、勝ち続けることは非常に難しいと思います。しかし強い事業を営んでいる企業に、超長期投資をする手法は参加者も少なく、自身が選んだ企業が本当に強い経済性を持った企業なら、大きく資産を増やすことが必ずできるのです。
ビジネスエリートになるための 投資家の思考法 The Investor’s Thinking
顧客の問題を解決できるビジネスマン
筆者は金融投資だけではなく、自己投資も重要だと断言しています。特に若い人は、自分の能力を高めることに力を注ぐべきと言っています。経験にお金を投じることで、ビジネスマンとして自分の価値が高まり、最終的に多くのお金を稼げるようになると考えています。そして年を重ね、お金を稼げるようになったら金融投資の割合を増やしていくべきと述べています。しかしビジネスマンも投資家も、問題解決の対価がお金に変わるということは変わりません。顧客が抱えている問題は何か、何を解決すれば利益を得れるか、合理性と創造力を用いて考え実行することが重要です。だから若いうちから割合は少なくても、金融投資も実践すべきと考えています。
自己投資と金融投資のバランス
若いうちは伸びしろが無限大の自己投資、年を取って年収的な伸びしろが限られてきたら、優良企業へ投資をして代わりに働いてもらう。自己投資と金融投資のバランスを常に考えることが重要であると述べています。
ビジネスエリートになるための 投資家の思考法 The Investor’s Thinking
まとめ
お金は問題解決の対価であり、お金を生み出す方法は2つ。優良企業の長期投資とビジネスマンとして自身が働くこと。どちらも顧客の問題を解決することがお金へと変わります。投資家としての考え方がビジネスマンとしても投資家としても生きるのです。自己投資と金融投資の割合は、若いうちは自己投資に振り向け、年齢を重ね稼ぐ額が増えたら、金融投資の割合を高めるのが王道のやり方です。このブログでは私が重要だと思うことを端的にまとめましたが、他にも優良企業の探し方を様々な企業を例を用いて説明したり、株以外の資産の考え方、持株会の考え方など様々なことが学べます。是非一読してみてはいかがでしょうか?