「スマホ脳」を読んだ感想

本の紹介

スマホ脳 (新潮新書) 新書 – 2020/11/18

 私たちの生活と切っても切り離せない存在となったスマホ。平均で1日4時間、若者の2割は7時間もスマホを利用している。しかし近年では、スマホの使用による悪影響が数々明らかになってきている。うつ病患者の増加、強い孤独感、失われた集中力、睡眠不足などなど。なぜ、スマホがこれらの症状を引き超すのか、われわれ人間はどのようにスマホと向き合うべきか、対応策はあるのか?スウェーデンの精神科医が書いた世界的ベストセラー「スマホ脳」のを読んだ感想をシェアしたいと思います。

人間の脳はデジタル社会に適合していない

 筆者の基本的な考えとして、人間の脳はデジタル社会に適合していないという考えがあります。人は地球に登場してから、99.9%以上の時間を狩猟と採集をして暮らしてきました。テクノロジーが発展してパソコンやスマホを持つようになったのは、ほんの数十年前の話であり、人類の長い歴史から考えれば極めて短い時間です。進化は長い時間をかけて起こりますから、生物学的に考えれば私たちの脳はサバンナの時と変わっていないのです。私たちの脳はサバンナの時と変わっていないのにもかかわらず、生活様式は劇的に変化しました。このミスマッチが様々な問題を引き起こすのです。

スマホの悪影響

ドーパミン

 スマホをついつい触ってしまう。気になって仕方ない。多くの人がスマホ依存症であると言っても大袈裟ではないでしょう。依存症を引き起こすのは「ドーパミン」が関係しています。

 ドーパミンは何に集中するかを選択させる効力があります。つまり人間の原動力と言っても差し支えないでしょう。ドーパミンは遺伝子を残せるように我々人間を突き動かしてきたのです。しかしスマホもドーパミン量を増やしてしまう効果があるのです。SNSで届く通知、インスタやTwitterなどをついつい見てしまう。実はこの時に大量のドーパミンが放出されているのです。スマホを開けば、新しい知識や情報が手に入る。原始時代の人間は生き延びるために情報が必要だったので、新しい情報により脳はドーパミンを放出するのです。それが原始時代の人間にとっては生きるのに必要不可欠でした。しかし現代の人間は必要以上の膨大な情報を、スマホを開けば見ることができるのです。ドーパミンをくれる対象に脳は意識を向けるので、徐々に人はスマホに依存していくようになってしまうのです。 

 

増えるストレス

 スウェーデンでは大人の9人に1人が抗うつ剤を使用しています。これはスウェーデンだけの問題ではなく、他国でもうつ病患者は年々増加しています。また孤独感を感じる人が多くなっています。SNSでいつでも誰とでも交流できるのに、何故孤独感を感じるのでしょうか?何故ここまでストレスを抱える人が増えたのでしょうか?

 筆者の見解は、SNSで他の人の華やかな世界が見えてしまうこと、いつでも競争に晒されてしまうことを挙げています。Facebookやインスタに投稿する写真は、充実している一瞬を切り取ったものであります。しかしそれらの写真をスワイプしていくと、他の人全員が華やかで楽しい生活をしているように感じてしまうのです。またSNSがない時代は競争相手といえば、せいぜいクラスメートなどの身近な人だけでした。しかし今は世界中の人が競争相手となってしまうのです。

失われた集中力・睡眠

 勉強や仕事をするときに、スマホが気になって作業を中断してしまうことはないでしょうか?おそらく多くの人がこのような経験をしたことがあると思います。日常的にスマホに集中力を持っていかれている人もいるかもしれません。その原因もドーパミンです。一日に何度もドーパミンを放出させるスマホは、脳の集中力を奪ってしまうのです。筆者は集中力を必要とする作業をする際には、スマホを視界に入らないところに置く必要があると言っています。現代では、集中力を維持する能力はとても貴重な能力となっているのです。

 また睡眠時間も、テクノロジーの出現により減少傾向が続いています。平均睡眠時間は100年間で1時間も減少しているのです。また寝付けない若者が増えています。理由はやはりスマホです。原因はブルーライトが関係していると言われています。原始時代は、陽の光があるうちに活動を行い、真っ暗になった夜は睡眠をとり、朝明るくなって目を覚ますという一連のサイクルがありました。脳は光を浴びると活動が活発になるのです。しかし現代人はスマホのブルーライトにより、夜も光を浴び続けているのです。その結果、脳は活動を辞めることができず、寝付けない人が増えているのです。

運動という解決策

 スマホが引き起こす様々な問題を解決する方法として、筆者は運動を推奨しています。実際に運動を定期的に行う人と、SNSに膨大な時間を費やす人とでは、幸福度に大きな違いがあることが実験により証明されています。勿論、運動を行う人の方が幸福度が高いのです。運動によりストレスが軽減されるほか、集中力や記憶力などすべての知的能力の向上が見込めるのです。

 ではどのような運動が効果的なのでしょうか?

結論、あらゆる種類の運動が脳に好影響を与えます。軽い運動も、激しい運動も、短い運動でさえ、好影響を与えることが近年の実験で明らかになっています。少しでも時間を作って運動を行うことが、現代のストレスフルな社会で必要なことなのです。

まとめ 

 人間の脳はデジタル社会に適合していないにもかかわらず、スマホに膨大な時間を費やしています。その結果、ストレスが増大し集中力や睡眠時間さえも奪われています。スマホの時間を減らす努力とともに、運動を行うことが推奨されています。スマホが引き起こす問題や解決策を、本書では様々な角度から記されています。是非、一読してはいかがでしょか。

スマホ脳 (新潮新書) 新書 – 2020/11/18

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